女性ドライバーが拓くトラック業界の未来

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世界的に多様性が求められる昨今、トラック業界も例外ではありません。これまで男性中心とされてきたこの業界において、近年、女性ドライバーの活躍が注目を集めています。

そのため性別にかかわらず誰もが活躍できる環境づくりは、企業の成長だけでなく、社会全体の持続可能性にもつながる重要な要素です。

本記事では、トラック業界への女性ドライバー参入によって期待される多角的なメリットを解説します。

この記事でわかること

  • なぜ今、トラック業界に多様性が求められているのか
  • 女性ドライバーが業界にもたらす具体的なメリット
  • UDトラックスの実践事例や欧米諸国の先進事例

こんな人におすすめの記事です

  • 物流・運送業界で採用や人材戦略に携わっている方
  • DE&I(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)を企業で推進している広報・人事担当者
  • グローバルな視点で日本の物流・雇用課題を考えたい政策立案者・研究者

トラック業界に求められる多様性|女性ドライバーの社会的意義とその可能性

社会全体のニーズの変化に伴って、トラック業界にも多様性が求められています。かつて男性中心だったこの業界ですが、女性の活躍推進という新たな潮流が押し寄せています。

その理由は、単に労働力不足を解消するだけでなく、働き方改革やジェンダーギャップ是正という社会的ニーズがあるからです。たとえば、多様な視点を取り入れることで、サービスの質が向上し、業界全体の活性化につながっています。

物流の根幹を担うトラック業界こそ、女性ドライバーの参入によって新たな可能性が拓けるのです。

トラック業界における女性参入の意義と背景

女性のトラック業界参入は、ジェンダーギャップ解消と経済的自立に大きな意義があります。

米国では2010年から2021年にかけて女性ドライバーが88%増加し、2024年には全体の13.7%に達しました。欧州でも増加傾向にあり、この流れはジェンダーギャップ解消に貢献しています。

また、トラックドライバーは学歴や経験に関わらず安定した収入が得られるため、女性の経済的自立を支える職業としても注目されています。

日本も「トラガール促進プロジェクト」など業界全体で女性の積極採用を推進しているものの、2023年時点でトラックドライバー全体に占める女性の割合は約3.5%と、依然として低水準です。 ​

女性トラックドライバーの増加がもたらす業界メリット

女性ドライバーの増加は、トラック業界に以下のようなメリットをもたらします。

  • 安全運転による事故率低下
  • 企業イメージ向上
  • 職場文化の改善
  • ドライバー不足解消

それぞれのメリットについて詳しく解説します。

1. 安全運転志向と事故率の低下

女性ドライバーの増加は、業界全体の安全性向上につながる重要なメリットがあります。アラバマ州立大学の12年間の調査によると、女性トラックドライバーは交通規則をより守る傾向があり、重大な違反行為の発生率が低いことがわかりました。

具体的には、女性ドライバーは男性より13.2%も違反率が低く、アメリカ運輸研究所も女性の事故率の低さを報告しています。フランスでは男性が交通事故の84%を引き起こしているというデータもあります。

このように、女性の安全運転志向が社会全体の交通安全向上に貢献していることが明らかです。

2. 企業ブランディング・イメージの向上

女性ドライバーの採用は、企業のブランドイメージを向上させる効果があります。その理由は、「DE&I(Diversity, Equality and Inclusion)」(多様な人材を受け入れ、それぞれが活躍できる職場環境を構築するための取り組み)の一環として評価されるからです。

米国の「Women In Trucking Association」では、女性が活躍する職場環境の構築を支援することで、企業のブランド価値向上に寄与しています。こうした取り組みは人材確保だけでなく、企業の社会的責任(CSR)活動としても位置づけられています。

このように女性ドライバーの積極的な採用は企業イメージの向上につながり、顧客からの信頼獲得にもプラスの影響を与えているのです。

3. 職場の雰囲気や文化の変化

女性ドライバーの増加によって、職場環境が大きく改善されるメリットがあります。まず、ハラスメント意識の向上と職場環境の改善が進みます米国の調査では女性ドライバーが職場でハラスメントや差別を経験する割合が高いことが報告されており、これに対応するための企業の取り組みが加速しているのです。

さらに、女性ドライバーのニーズに応えるため、柔軟なシフト制度や働き方改革も導入されています。たとえば育児休暇や子育て支援制度の充実、柔軟な勤務時間の設定などが積極的に取り入れられており、こうした変化は女性だけでなく全従業員のワークライフバランス向上にもつながっています。

4. ドライバー不足への補強

女性ドライバーの採用促進は、深刻なドライバー不足問題の解決策となります。国際道路輸送連合(IRU)の2024年報告によると、世界36カ国で約360万人のトラックドライバーが不足しており、これは世界GDPの70%を占める地域に影響を与えています。

欧州では約23万人のドライバーが不足し、今後数年で74.5万人に達する可能性があるとのことです。米国でも2024年時点で約6万人のドライバーが不足しており、年末までに8.2万人に増加する見込みです。

このような状況下で女性ドライバー比率の上昇や雇用促進が進めば、ドライバー不足問題の緩和に大きく貢献できるでしょう。

UDトラックスの女性活躍推進と車両設計の工夫

UDトラックスは女性ドライバーの活躍を推進するため、車両設計からトレーニング環境まで幅広い取り組みを行っています。

代表例が「クオン」の車両設計です。ステップ高さの最適化やマルチアジャスト機能付きシートにより、体格差に関係なく快適な運転環境を実現しています。また、長距離走行での疲労軽減に役立つ「UDアクティブステアリング」なども搭載されているのです。

UDトラックスは日本の女性ドライバーを対象とした試乗会も開催しています。試乗会の詳細についてはこちらの記事および動画をご覧ください。

女性ドライバーがもっと輝く物流の未来を共創 - UDトラックス女性ドライバー向け試乗会 2024

さらに本社には福利厚生施設が充実し、「ダイバーシティ&インクルージョンウィーク」の開催など組織文化の改革も進められています。こうした取り組みが評価され、厚生労働省から「えるぼし」認定も受けています。

また、女性支援の取り組みは、海外でも高く評価されています。南アフリカでは、UDトラックスが「Ultimate Women empowerment(女性躍進)プログラム」を導入し、男性比率が高い運輸業界で女性に対する認識を変える積極的な取り組みを実施しました。商業輸送アカデミーと提携したトラック運転手研修プログラムへの支援などにより、南アフリカの自動車業界で最も権威ある「naamsa Annual Accelerator Awards」で表彰を受けています。このように、UDトラックスは世界各地で女性の地位向上に貢献し続けているのです。

欧米の先進事例

欧米では女性トラックドライバーの活躍を推進するための先進的な取り組みが行われています。業界団体による支援活動や欧州の制度的サポートなど、参考になる事例を紹介します。

アメリカの事例

アメリカでは「Women In Trucking Association(WIT)」が女性ドライバー支援で大きな成果を上げています。この非営利団体は女性の雇用促進、業績の称賛、職場での障壁最小化を目的とし、業界全体を巻き込んだ活動を展開しているのです。

さらにWITは「Top Companies for Women to Work in Transportation」という表彰プログラムを実施し、女性が活躍できる企業を評価することで業界全体の意識改革も促進にも貢献しています。

欧州の事例(フランス、ドイツ)

欧州では女性ドライバーの参入を促進するための制度的支援が充実しています。フランスでは女性トラックドライバーの日常を描いたテレビ番組「Queens of the Road」を放送し、女性の活躍を社会に広く伝えています。ドイツでは公共補助や訓練制度、育児との両立支援など、女性が安心して入職できる制度設計が進んでいます。

こうした仕組みにより、女性の職業選択の幅が広がり、トラック業界への参入が促進されている。

まとめ:女性ドライバー参入こそがトラック業界の救世主となる

今回は女性ドライバーのトラック業界参入について解説しました。

その意義は単なる人手不足解消にとどまらず、安全運転志向による事故率低下や企業イメージ向上、職場環境改善など多岐にわたります。女性ドライバー参入は業界の課題解決だけでなく、社会全体のジェンダーギャップ解消にも貢献するのです。

今こそ企業と行政が連携し、女性が活躍できる環境づくりを進めることで、トラック業界に新たな未来を切り拓いていきましょう。