大型トラックの稼働率を向上するには?原因と対策を解説

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大型トラックの稼働率は、物流の効率性と企業の収益に直結する極めて重要な指標です。トラックが安定して稼働しなければ、納期の遅れや追加コストの発生など、サプライチェーン全体に大きな影響を与えます。

この記事では、大型トラックの稼働率が低下する主な要因と、それを改善するためのフリート管理の取り組みについて解説します。さらに、各国の先進的な事例も紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

大型トラックの稼働率が低下する原因

大型トラックの稼働率が低下する背景には、車両故障や法規制、運転手不足など、複数の要因が絡み合っています。まずは、これらが物流オペレーションに与える影響と、対策を解説します。

 

突発的な車両故障

エンジンやトランスミッションの故障は、大型トラックの突然の停止を招き、納期遅延や代替輸送の手配などで余計なコストが発生します。さらに、冷却系やブレーキの不具合など、本来であれば定期点検で防げるケースも少なくありません。

こうした予期せぬトラブルは、ダウンタイムを長引かせるだけでなく、取引先からの信頼低下にもつながります。

 

法規制、コンプライアンスの影響

大型トラックの稼働率は、法規制やコンプライアンス強化の影響を大きく受けます。ドライバーの労働時間制限や休息時間の義務化によって運行スケジュールの調整が必要となり、稼働率が低下するのです。

さらに、排出ガス規制に適合しない車両は、運行制限を受けます。過去には、性能試験の不正によって運行停止となった事例もありました。

こうしたリスクを避けるには、法制度を把握し、柔軟な運行体制を構築することが重要です。

 

運転手不足、勤務時間の制約

トラック運転手の人手不足が深刻化し、高齢化や長時間労働が新規人材の確保を難しくしています。働き方改革により労働時間も制限され、トラックがあっても稼働できない遊休状態に陥るリスクが高まっています。対策には労働環境の改善や人材確保のほか、配車効率の最適化とテクノロジーの活用が不可欠です。

 

整備にかかる時間の増加

大型トラックの整備時間の増加は、稼働率に直結する重要な要因です。エンジンや燃料系統の不具合、もしくは急加減速やアイドリングの多用といった運転操作により車両の部品が早期に劣化することで、整備や修理の頻度が増加します。

これらの問題を防ぐには、定期的な点検とエコドライブ教育による運転技術の見直しが不可欠です。

 

大型トラックの稼働率向上に必要なフリート管理

大型トラックの稼働率を高めるには、故障の予防と計画的な管理が重要となります。その中心となるのが、運行状況やメンテナンス、コスト、法令遵守などを一元管理するフリート管理です。

適切にフリート管理をすれば、故障の予防や稼働時間の最大化につながるでしょう。中でも、稼働率向上に効果的とされる4つの取り組みについて、詳しくご紹介します。

 

定期的なメンテナンス

大型トラックの稼働率を安定して維持するには、定期的なメンテナンスの実施が欠かせません。使用頻度が高いほど部品の劣化や消耗は避けられず、放置すれば突発的な故障や長期のダウンタイムにつながります。

タイヤやブレーキの状態、オイル漏れなどを定期点検で早期に把握・対処すれば、大きなトラブルを未然に防ぐことができ、修理コストの削減にもつながるでしょう。それには、全車両を対象に計画的な整備を行うことが重要です。フリートマネジメントシステムを活用すれば、管理の効率化も可能となります。

 

運転手へのトレーニングの実施

大型トラックの稼働率向上には、車両管理に加え、運転手のスキルアップも不可欠です。運転技術や車両知識は、燃費と車両寿命に直結するため、定期的かつ体系的なトレーニングの実施が重要です。なお、日本の国土交通省は12の指導項目を示し、安全運転や点検整備の習得を推奨しています。

事故や燃費悪化の防止には、こうした教育の継続が欠かせません。特に、新人や中途入社のドライバーには、個別の習熟度に応じた指導が効果を発揮します。

 

規制の遵守

大型トラックの稼働率を安定させるには、関連法規や業界ルールの遵守が欠かせません。違反が発覚すれば、車両の使用停止や事業停止といった重い処分を受ける可能性があり、企業の信頼にも大きな影響を及ぼします。これを防ぐには、運行記録や点呼、アルコールチェック、法定点検などを確実に実施し、日常業務にコンプライアンスを組み込むことが重要です。

また、法改正が頻繁な物流業界では、最新情報の把握と社内ルールの適時見直しも求められます。こうした取り組みの積み重ねが、トラックの安定稼働とリスクの回避につながるのです。

 

テレマティクスシステムの導入

大型トラックの稼働率を高める手段として、テレマティクスシステムの導入が注目されています。これは、GPSや通信技術を使い、車両の位置や運転状況をリアルタイムで把握・管理できる仕組みのことです。走行ルートや待機・アイドリング時間の可視化によって運行効率を最適化できるほか、故障の兆候も早期に把握可能です。

さらに、運転操作の記録をもとに指導が行えるため、安全性向上にも寄与します。稼働率と運行品質の両立に向け、テレマティクスシステムは今後不可欠なツールといえるでしょう。

各国の大型トラックの稼働率向上のための取り組み

 

トラックの稼働率を高める取り組みは、世界各国で積極的に進められています。ここでは、オーストラリア、日本、フィリピン、タイの4ヵ国における代表的な事例を紹介します。実際、どのように稼働率向上に貢献しているのかを、詳しく見ていきましょう。

オーストラリア:長距離輸送の効率化と自動運転の導入

オーストラリアでは、広大な国土と長距離輸送のニーズに応えるため、ロードトレイン(連結トラック)を活用し、少ない車両で大量輸送を実現しています。これにより、車両の稼働効率が大幅に向上しています。さらに近年は、自動運転技術の導入も進み、鉱山地域では自律走行トラックの実用化が始まりました。

これらの取り組みにより、ドライバー不足の緩和や安全性の向上が図られ、輸送の稼働率最大化に貢献しています。過酷な環境下でも高稼働を実現する先進事例として注目されているのです。

日本:自動物流道路構想とホワイト物流の推進

日本では、少子高齢化や働き方改革によりドライバー不足が深刻化し、大型トラックの稼働率低下が課題となっています。これに対し、官民連携による対策が進行中です。例えば、高速道路に自動運転トラック専用レーンを設ける「自動物流道路」構想では、安定した輸送力の確保と稼働率向上を目指しています。

また、国が主導する「ホワイト物流推進運動」では、荷主にも協力を促し、積載率の向上や労働環境の改善を推進しています。配送時間の柔軟化や中継輸送の導入なども進み、持続可能な物流体制づくりが進められているのです。
 

フィリピン:ナンバーコーディング制度で慢性的な交通渋滞の解消

フィリピンのマニラ近郊では、慢性的な交通渋滞が大型トラックの稼働率を大きく低下させる要因となっています。これに対し政府は、渋滞緩和のためにナンバープレートの末尾の数字で特定の日を通行禁止にする「ナンバーコーディング制度(UVVRP)」を、2021年12月から導入しました。

この制度は主に自家用車を対象としていますが、必需品輸送車両へは適用除外措置が設けられています。併せて、インフラ改善への取り組みも進められていることから、今後さらなる輸送効率化が期待されています。
 

タイ:GPS義務化で運行管理を強化

タイでは、物流インフラの近代化と交通事故防止を目的に、大型トラックの運行規制や技術導入が進められています。特に、タイ陸上運輸局により2016年から推進されているトラックへのGPS搭載義務化により、リアルタイムでの運行管理が可能となりました。

これにより、速度超過や長時間運転といった事故リスクの抑制と、運転手への安全運転の指導などが可能になり、事故削減につながっています。
 

大型トラックの稼働率向上には、長期的な対策とフリート管理の強化が不可欠

大型トラックの稼働率向上には、法規制を見据えた長期的対策とフリート管理の効率化が不可欠です。特に、ドライバーの労働環境改善は、人材確保のポイントとなるでしょう。長時間労働の是正や休息確保、福利厚生の充実により、離職防止と安定稼働が期待されます。

また、環境規制への対応として、燃費効率や排出ガス性能に優れた車両の導入も不可欠です。さらに、AIによる予測メンテナンスや故障監視が進み、事故防止やコスト削減が可能になりました。こうした取り組みを効果的に進めるには、運行や整備、法令対応を一元的に管理するフリート管理の体制構築が重要です。ただし、管理は煩雑で手作業には限界があるため、フリートマネジメントシステムの導入が稼働率向上に大きく貢献します。

UD Trucksでは、フリートマネジメントシステムの一環として「UDインフォメーションサービス」を提供しています。このサービスは、車両のテレマティクスデータを活用し、リアルタイムで車両の状態を把握することで迅速な対応を可能にし、稼働率の向上とコスト管理が実現可能です。

また、緊急時対応の「UDロードサポート」と組み合わせることで、効率的な運行管理を支援し、安全性と運行効率の向上に寄与しています。